SUMMERY

目をつぶらない

滑らかに生きたい。明晰に生きたい。方途を探っています。

現代作家・小説

思春期の性と身体をどう文学に描くか:村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』

小石川植物園 先日書いた近況報告のエントリで最近全然本が読めていないと書きました。今読むと、このエントリは一つの記事としてはあんまり長大で読みにくい部分があるのでそのうち分けるかもしれません。 summery.hatenablog.com そんな中でもしっかり読ん…

テッド・チャンにおける〈愛への信仰〉の主題―「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」(2010)から

大学一年生の時、シラバスでふと見つけた船曳ゼミに未だに参加しています。その読書会関連で標題に掲げた作品を読んだので、今日はそれについて考えたことを書きます。 ※この読書会の関連で読んだ作品について考えたことをまとめた記事として、他に以下のも…

作家・古谷田奈月さんについて 三島賞受賞作・「無限の玄」(2017年)まで

最近話題作を繰り出している作家として私は古谷田奈月さんに注目している。二度くらいにわけて、ちまちま調べた情報や、読んだ古谷田小説の感想について書きたい。 なお、他に村田沙耶香さんや高山羽根子さん、高橋弘希さんについても関心があり、それについ…

村田沙耶香、高山羽根子、雑記

さて、雑記なのですが、最近読んだ小説についてまずは一言ずつ感想を述べたい。 村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』(朝日新聞出版、2012年) publications.asahi.com 最近珍しいニュータウンを舞台にした小説。ニュータウンの開発やその停滞と第…

Silent Hill4 と最近読んだ現代小説

www.youtube.com 今週も忙しかったなあ。 折に触れて観直す動画が上に貼ったもの。Silent Hill4:The Roomというゲームのオープニング動画であるのだが、現れる異形のものたちの表象が見事だと思う。ゲーム内で「ゴースト」と呼ばれる彼らのいずれも、大きな…

高橋弘希『送り火』の語り手に対する違和感

毎日疲れる。心地よい疲れと、身体が重くなるような倦怠と、その狭間にある。これ以上忙しくなると疲弊していきそうな、そんなギリギリなところにいる気がする。この生活の破綻もそう遠くないかもしれない。 高橋弘希の『送り火』を読んだ。第159回芥川賞受…

橋本治の死去に驚く:「ずっと若い人」の死

橋本治が死んだ タイトルどおり、作家・橋本治さんのご逝去に驚いた。 作家の橋本治さん死去 70歳 | 2019/1/29(火) 18:13 - Yahoo!ニュース 橋本治については以前別のブログに書いた。そこから少し長めに引用しておきたい。 引用元記事 queerweather.hatenab…

「懐かしい」とは何か? 大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』

毎日なかなか疲れる。そもそもこれまでずっと座りっぱなしの生活を送って来たのだが、今は毎日、二時間は立っている。もちろん電車で。それなりに空いている電車に長時間乗るのが私の通勤スタイルで、生活のあり方としては、どちらかといえば健康的になった…

悲しみとの共生:大江健三郎「資産としての悲しみ—再び状況へ(五)」

物語に倦んで、ふと手にとった『世界』(1984年7月号)に大江健三郎さんのエッセイを見つけた。「資産としての悲しみ−−−再び状況へ(五)」と題されたこのエッセイは、『生き方の定義−−−再び状況へ』という単行本に収録されることになった。 ci.nii.ac.jp 単…

転換のトラウマ:『燃えあがる緑の木』

書いたことを公にするのに倦んでいた。日記はひたすらに書いていたのだが、それらは公にするにはあまりにも私的だったり、文章がおぼつかなかった。webライターと呼ばれる人々が呼吸をするようにいつもの文を紡いでいるのだったら、確かにそれは技術だと思う…

19『同時代ゲーム』-1

『ねじまき鳥クロニクル』と同時に、『同時代ゲーム』を少しずつ読み進めている。まだ大したことは考えていないので、メモ程度にする。 ○この作品を読む中で自分の中で一つ明らかになったのは、大江健三郎という作家の一つの特徴である。主人公=語り手の語…