目をつぶらない

文学を専門とする大学院生の日記です

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新しい時代が迫ったのを感じた、肌の上をすべってゆく流線型の新しい時代が、彼はそれを滑らかに知り、そして遠く果てしない砂漠から僕の方を見る、夜の空に金色の月がかかり、駱駝の群れが砂丘を滑りおちる、一頭、また一頭、吸い込まれる、彼が僕の方を観ていることを僕は知っている。僕は彼から10キロも20キロも離れているから、僕の隣りの私は彼のことがわからない。私には彼が見えない。けれども僕には見える。新しい時代の新しい砂丘の上で、それらの日々の中で、私はいつまででも一人で過ごす。僕は彼がこちらを見ている、彼が僕のことを見ているということがわかる。私にはそれはわからないが、それを信じてみようという気にもなるのだ。彼の方を見ながら、彼を遠く見やる僕の、遠い眼差しが果てることのない、僕は何度も彼にあったことがある。絶対に近づくことはできないけれども、たどり着く道のない目的地をただ周縁を回って見ている僕を黙って、又一つ向こうの丘の上から、私は見ていた。

 

 

 

 

部屋の隅に人が居る