SUMMERY

目をつぶらない

滑らかに生きたい。明晰に生きたい。方途を探っています。

雑記:岩盤浴に行ってきた

 岩盤浴に行ってきた。3日前のことである。

 家から自転車で20分くらいのところに岩盤浴場ができたのは、三年前の話だ。それから一年ほどは、私の家の近所で岩盤浴ブームが巻き起こっていたように思う。母からも「隣の家のおばさんは年間パスを購入したらしい。私も行ったが割とよかった。あんたも行ってみれば」というような勧めを二度ほど受けた。けれど当時の私は特に興味がなかったので、行ってみたりはしなかった。

 それから三年経過した、3日前、その前を偶然自転車で通り過ぎて、なんとなく入ってみたくなった。今行かなかったら、多分一生行かないだろうという気持ちが、なぜかでてきた。一年後の自分のありようさえ全く想像できない私であるのに、なぜ岩盤浴に関しては一生という長いスパンで思考できたのか本当に謎である。働き始めてからも別に土日は休みだし、いくらでもいけるはずなのだが。

 とりあえず訪問してみるも、受付でバスタオルその他のタオル類を借りるのに合計200円ほどかかると聞いて、なんだかお金がもったいなくなり、入らずに帰宅した。しかし、「今いかなければ…」という前述の謎の焦りが再びわきあがってきたので、今度は自宅のタオルを持って再来。

 中に入ってみると、そこは岩盤浴を中心に据えた総合保養施設のような趣で、食堂や普通の休憩コーナー、漫画付きの休憩室、温泉、小型ゲームセンター、マッサージコーナー、床屋など実に多様なゾーンからなっている。

 とりあえず温泉に入ったが、万人向けにそうしているのか割とぬるくていまいち。そしてまた結構手狭でもあった。

 温泉を出た後に岩盤浴に行くことにしていたので、それ用の服に着替え、一直線に岩盤浴場に向かおうとしたが、途中の漫画付き休憩室で『寄生獣』をみつけ、読みふける。気がついたら3時間経っていた。

 『寄生獣』を初めて読んだのは14年前の歯医者の待合室。今読んでも、出来がよい作品だなと思う。緊張感のある展開と、人間とは何か的な重い問題提起、そして自然なユーモアが同居していて、とにかく読ませる。今回再読して思ったのは、素直でまっすぐなシンイチは一方で結構不器用で不安定な子なんだな、ということ。思春期の不安定な少年を主人公に据えることにより物語が豊かなものになっている。私もミギーのような友達が欲しい。

 そんなこんなで目玉の岩盤浴に行く頃には、夜8時になっていた。どこで服を脱ぐんだ?と思いながら、割と重々しいドアを開けるとそこには浴衣を着たまま横たわる人々の姿が。あぁ、岩盤浴ってお湯ないんだ、と今更気づきながら横たわった。だらだらと汗をかいた。それがいいということだったが、うーん。

 休憩室に再来し、『寄生獣』の続きを読む。安っぽいヒューマニズムに回収されそうなテーマ設定だし、実際に大部分はそれに回収されている。人間側と寄生獣側との対立も、どこかの道徳の教科書にでてくる教材を少し高度な構図にしただけのように見える。しかしながら、読ませる。とにかく読ませる。

 岩盤浴自体はあまり印象に残りはしなかったが、帰ってベッドに入ると体が妙にほかほかして心地よかった。