SUMMERY

目をつぶらない

滑らかに生きたい。明晰に生きたい。方途を探っています。

職場で新人としてあること 引き継がれてないことで怒られることについて

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 この秋で入職一年半を迎える。教育現場であるため、他の職場とは環境が全く異なることは重々承知しつつ、それでも「新人」もしくは「新入社員」として過ごしたこの期間に、おそらくどの職場の「新人」でもぶちあたるであろうことや、そこで考えたことをまとめたい。

 

引き継がれていないことで怒られる。

 仕事というのは基本的にどのように小さいものであっても、複数のステップからなるため、一つ一つの業務につき一から十まですべてを引き継ぐことは到底無理である。第一にそれほどに引き継ぎに時間はかけられないし、第二に仕事をやりながら教える方がはるかに効率がよい。だからまず口頭で教えられることを伝えきると、「とりあえずやってみて」ということになる。

 それでやってみるのだが、すべてを引き継ぎきっていないので、当然その仕事には長年その職場にいる人にとっては「あやまち」「ぬけ」と思われるような瑕疵がある。これは、どんなに細かくて簡単そうに見える仕事にも、確実にあるのである。

 いま「瑕疵」と書いたけれども、これは長年やっている人には「瑕疵」だが、初めてあるいは数度目の人にとっては「瑕疵」とは認識できないものである。したがってここに仕事を教える方と教えられる方との間のギャップが生まれる。すなわち、完成した仕事に関し、それを新人に頼んだ先輩の側は「不完全な仕事が上がってきた」と捉え、新人の方は「言われた通りにやったので完璧」と捉える。

 このギャップの状態をどう埋めるかということが、先輩の側の腕の見せ所であるわけだ。「私の伝え方が悪かったのですが」「そういえば言ってなかったんだけど」とこの状況に自分の伝達の問題を見出せる先輩は立派である。「え、これやってないの?ありえない!」「常識的に考えてここはこうするでしょう!」「気が利かない」とか言って伝えていないことができないことを、新人の「常識の欠如」「周囲への気配りの欠如」に帰責しようとする先輩は最悪である。

 こうした先輩の「常識」「気配り」とはよくてその職場内だけに通用する常識、悪ければその人の中だけの常識=マイルールにすぎない。こういう先輩の話を真に受けると業務をするたびに自分を責め、自己否定するようになっていくので要注意である。しかし、ここまでわかりやすいと逆に、周囲も陰に陽に新人の味方に付いてくれる。

 面倒であるのはその中間にあるような冷笑系、嘲笑系の人であろう。つまり新人がした仕事につき、「あぁ、やっぱりわからないか、ごめんね。でもさちょっと考えれば、どう?こっちの方がみんな便利だと思わない?そういうことを考えられるようにならないと」というような言い方で、一見事態を自己の伝達の不完全性に帰責しているように見えて、その実その職場固有の論理(これも悪くするとその人の中のマイルールの可能性あり)に不慣れな新人を責める、というやり方をする先輩である。こういう人はしばしば、半笑いしながら言ってくるわけで、新人としては大変嫌な気分になる。一体何が正解なのかわからないが、侮蔑されているような印象ばかり尾をひく。

 要するにその職場が期待する仕事の水準を、新人の矜持を損なわずに伝達することは難しいということだ。なぜならどのような職場にも独特のカルチャーがあり、それを逐一全て挙げて説明することは、できたとしても膨大な時間がかかって効率が悪いからである。習うより慣れろの方が効率的なのだ。

 しかし「習うより慣れろ」式というのは、つまりは「失敗から学べ」式ということである。だから当然、職場の一人一人に新人の失敗を受け入れる体制が整っていなければならない。そこで重要なのは、そもそも職場の人々が最終的に「失敗」と判断することの9割は新人にとっては「失敗」ではなく「言われた通りに完璧にやったこと」であるという事実である。このギャップを埋めるには、どれだけ緻密に行おうと基本的には引き継ぎは不完全に止まるということを、まずは新人を受け入れる側がよく認識する必要がある。

 新人は職場の内部では弱い。基本的に孤立無援で、その職場ですでに色々な人から頼られている先輩が「新人のせいだ」と言えばまずは職場の多くの人が、新人を疑うであろう。何かの失敗が周囲にまで影響を及ぼす状況で、教育係が悪いのか新人が悪いのかグレーなケース(大抵はどっちも悪い)でも、新人の「気配りが足りない」「常識がない」などと抽象的な言い方をすれば責任転嫁は容易である。なぜこうした事態になるのかと言えば、誰も皆、問題が起きた時、その責任を負いたくないからだ。だからこうした事態を未然に防ぐには、究極的には、失敗に寛容な組織を作るしかない。

 

 しかし、組織の中で「新人」をやることの大変さ。書きながら、改めてそれを思う。別に日本の職場だから大変、と言うつもりはない。外資外資で大変だろう。職場独自のルールは、どのような職場にもあるだろうから。ただ、社員の平均勤続年数が長ければ長いほど、職場独自のルールは固定化する傾向にあるだろうし、その意味で一つの職場に長く務める人の多い日本の職場は大変かもしれない。

 何にせよ、「新人」という役回りはあまり何度も繰り返す気にはなれないものであることは確かだ。

 

 

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こちらもどうぞ。あんまり青臭いのだが、新入社員として普通に思うことを普通に書きました。

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