SUMMERY

目をつぶらない

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5文型に変わる提案が新鮮 安藤貞雄『英語の文型:文型がわかれば英語がわかる』(開拓社、2008年)

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 何を学ぶに際しても、学び始めは特に楽しいものではないだろうか。昨日に続け、今日もまた、英文法に関する本を読んだ。 昨日読んだ中川右也『教室英文法の謎を解く』(開拓社)という本の参考文献欄に載っていた本である。同書については以下の記事にまとめておいた。

summery.hatenablog.com

 

 今日読んだのは安藤貞雄『英語の文型:文型がわかれば英語がわかる』(開拓社、2008年)である。

 

英語の文型―文型がわかれば、英語がわかる (開拓社言語・文化選書)

英語の文型―文型がわかれば、英語がわかる (開拓社言語・文化選書)

 

  

 生成文法の専門的な用語が出て来る部分があるため、そこに関してはあまりよくわからなかったが、それにしても、大体の部分は理解することができたと思う。

文法の基礎知識が中学段階で止まっている私

 私が英文法に初めて触れたのは、地元の個人塾だった。先生が自宅で開き、一人で切り盛りしている塾である。その先生は私に、英文法とはどういうものか、文法に即して英文を読むということがどういうことなのか、そして、辞書をどう引けばいいのかということを教えてくれた。今になって思うが、そこで基本的な学習の仕方を教えてもらうことができたことは、私に取って本当に幸せなことだったと思う。

 そこで学んだ英文法は、今から振り返ると基礎の基礎だった。そして、高校以降今日に至るまで、基本的にその基礎の上に、ほとんどの英文を理解できてきた。そのことは、昨日書いたとおりである。

 しかし、だからこそというべきか、一方で私は基本的な文法事項に関する自分の中の知識をアップデートしたり、当初抱いた素朴な疑問を解決したりする努力を怠ってきてしまいもした。

 今回この本を読み、 中学からこのかた、持っていた疑問や違和感のいくつかが綺麗に氷解していくのを感じた。大変刺激的な読書体験だったといえる。

    ここではその一部を取り上げることにする。

I am in the room.という文に関して抱いた疑問

 中1で最初に英文法を習い始めたあたりの時期のことである。I am in the room.という文章にあたり、私はやや戸惑ったのを覚えている。戸惑った理由は、「これは第何文型なんだろう?」「in the roomは補語なのかな?」という二つの疑問を持ったからだ。

 先生は、前者の私の疑問に関しては「第1文型」後者の疑問に関しては「in the roomは、前置詞+冠詞+名詞からなる副詞句である」という答えを与えた。私は前者に関しては、「in the roomの部分は文型に分けるときは捨てられるんだな。随分ダイナミックに切るんだな。」となんとなく違和感を抱いた。後者に関しては、「前置詞+冠詞+名詞は形容詞句にもなると習ったから、補語と考えてもいいように思うのに、なぜそうならないのだろう」とさらなる疑問を思い浮かべた。

 この本をもとにすれば、先生の前者の答えは、5文型をもとにした説明の枠内では正解。だが、そもそも、このように分類せざるを得ないことに問題があるというのが筆者の主張。後者の答えも正解だが、上の説明では私が抱いた疑問が当然でてくるということになる。それでは、筆者は以上の違和感や疑問にどのように対応するのか。 

違和感と疑問がするすると解消

 筆者によれば、件の文におけるin the roomのような副詞句は、「動詞にとって義務的な副詞句」(以下、Aと表記)である。Aは、それが存在しないと文が成立しないような、文の成立にとって不可欠な副詞句である。

 本来的に、Aにあたる部分を欠如させた文が成立しないにもかかわらず、あたかもそれが主要素ではないように、件の文をSV=第1文型というAを無視した分類にせざるを得ないこと、そのことが、「5文型の最大の欠点」(9頁)だというのが筆者の問題提起である。学習の最初期に持った上記の違和感は、「5文型の最大の欠点」に関わるものだったんだ…。

 ということで、このような欠点を克服すべく、Aを文の成立にとって不可欠な要素と見て、SVA、SVCA、SVOAを加えた8文型の提案こそが、筆者の最大の主張である。これには思わず頷いてしまった。

 ところで、私の疑問の後者、すなわち「in the roomはCではないのか」という疑問に関しても、「論争が行われたことがあった」(25頁)とのこと。初学者が素直に持つ疑問も案外大事なんだなと思う。

 これに関して、筆者は、I am in the room.のような文はWhere is he?という疑問文の答えになるから、副詞句決定、と述べている(25頁)。確かにwhereは疑問副詞なので、そう言われてみるとすぐに判別できるな。そういう風に考えればいいのか。

 以上のように、中学時代以来有していた違和感と疑問がするすると解消していく快感を味わうことのできる読書体験だった。他にも、全く知らなかった文法事項が満載で、一気に読んでしまって、知的好奇心が満たされる満足感を味わった。

 しかし同時に、もう少し早くこの本を読んでいれば、得することも多かったのにな、ということを繰り返し思った。でもしょうがないな。今日まで英文法を改めて学び直そうとは一度も思わなかったのだ。6年間、一度も。やれやれ。これから少しずつ文法知識の幅を広げていきたいと思う。