SUMMERY

目をつぶらない

文学を専門とする大学院生の日記です

僕がUTクラスタだった頃

別のところで書いた記事の転載です。ご笑覧下さい。 聴衆に向かって話すように書くと、やっぱり文体やノリが普段とはうって変わった感じになります。以下本文 最近ちょっと真面目な記事ばかり書いていたので、今日は僕が最高のツイッターだった時の話と、そ…

学校の物語を語る欲望:「東大合格者数高校ランキング」に思う

ツイッターを見ていたら、東大合格者に言及するつぶやきがあったので、高校時代たまに見ていた「高校ランキング」スレッドを少し読んだ。 2018年 東大合格者数 高校ランキング Part20 www.inter-edu.com 懐かしい。当時の熱気そのままである。いや、むしろ加…

余白から生まれる透明な寂しさがいい 市川春子『宝石の国』

大学の友人たちとの読書会で、市川春子『宝石の国』を読んだ。今日はその感想を書いていこうと思う。 宝石の国(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 市川春子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/07/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (9件) …

こち亀はどこで間違ったのか

こち亀の「くそ」化 別にアンチを助長するわけでは決してないのだが、数年前以下に紹介されているスレを見つけて、スレタイトルから驚かされたのを思い出す。 iwacchi.tumblr.com このスレタイトルがいかなる背景から登場するにいたったかということに関して…

ヒカルが碁に向かう姿のリアリティ:ジャンプ的成長物語の傑作『ヒカルの碁』

先週末に実家に帰って、ふと『ヒカルの碁』を読んだ。 ヒカルの碁 全23巻完結セット (ジャンプ・コミックス) 作者: 小畑健 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2010/01 メディア: コミック クリック: 6回 この商品を含むブログ (11件) を見る 主人公が成長して…

物語を読めないと死ぬ Jホラー映画の論理と『リング』

物語ることで生きる 人は生きる中で、自分の人生の物語を措定する。本当は大部分偶然が重なって、たまたま今のような自己があり、またこれからも同様に大部分偶然の作用によってこれからの生が形作られていくはずだが、それらの偶然に意味づけをすることによ…

どんな映画になるのかな。宮崎映画『君たちはどう生きるか』を『風立ちぬ』から予想する。

どうやら宮崎駿の新作映画のタイトルは、朝日新聞によれば『君たちはどう生きるか』らしい。正直かなり驚いた。この情報は朝日新聞デジタルより。 www.asahi.com 同記事にも言及があるように、このタイトルは吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』からとった…

戦後70年の年に祖父が死んだ時のこと

このブログで一番読まれているのは、勢いだけで書いた猫の死に関する記事である。 summery.hatenablog.com 飼っていた猫の死は当時僕が体験した、もっとも身近な死であった。必然的に強く印象に残った。 それから一年後の2015年、僕は母方の祖父の死を経験す…

押井守監督「スカイ・クロラ」の場所−−−諦めることとともに生きる

今回は(今回も?)あまり一般読者に裨益する記事ではないのだが、好んで観るアニメ映画「スカイ・クロラ」について書く。現時点でこの作品について言及したりまともに論じているブログ記事などは少ないので、この作品に出会い、どうしようもなく気になって…

あなたにとって戦争はどう見えるのか? 「この空の花−−長岡花火物語」「この世界の片隅に」:早稲田松竹に行ってきた。

あけましておめでとうございます。年末に読んだ本や観た映画、行った場所の中で面白かったものをまとめます。 別のブログに以下のような記事も書いたのですがこっちではこっちでまた別に書きます。 queerweather.hatenablog.com 映画:早稲田松竹に行ってき…

フィリップ・K・ディック『高い城の男』:偽の歴史と二項対立

大学一年生の時、シラバスでふと見つけた船曳ゼミに未だに参加しています。文化人類学者の船曳建夫先生のゼミです 最近、そのゼミの読書会で、フィリップ・K・ディックの『高い城の男』という作品を読んだので、感想を書いておきます。 高い城の男 (ハヤカワ…

繊細さを失わず、生活を見つめる:津島佑子「水辺」

昨夜は眠れなかった。築30年を超える私のアパートの窓は、時折激しくガタガタと鳴って、その度にまどろみから覚まされた。そして、このような嵐の夜に、その風雨の影響を受けず曲がりなりにも睡眠をとることができるとはなんということだろう。住むべき家が…

「やりがい搾取」の弊害

今日は顧問をしている部活動の練習試合があったので、1日学校にいた。 いくら仕事場である学校にいるとはいえ、部活動のための休日出勤である。だから、本来は自分の好きなことをしていていいのだ。実際に同じように休日出勤をしている同僚たちは思い思いの…

飲酒事故で亡くなった東大生の高原くんに関する記事を書いた

前回の記事で、僕は次に2012年に飲酒事故でなくなった東大生の高原くんに関して書くと述べた。 summery.hatenablog.com その記事を、僕は今参加している別のブログに書いた。 queerweather.hatenablog.com 昨日サイゼリヤで一人ワインを飲み、若干酔い始めて…

「不幸でもいい。ただ、生きていって欲しい。」船曳建夫先生の言葉をフィクション化してブログを書いた

大学の学部生だったころ、僕がよく(しつこく)顔を出していたゼミの先生が退官することになった。僕が東京大学に通っていたことはこのブログではもはや明らかなので、先生の名前も出してしまうが、その先生とは船曳建夫先生である。 船曳先生は退官記念講演…

物語の力/創作の力とは何か

最近、twitterで自分と同じように、中高の教員をしている人をフォローするようになった。そうしてフォローした中の一人がつぶやいた以下のようなつぶやきが、昨日私のタイムラインに投稿された。二つの企業に内定した卒業生に対して、教員をしているツイッタ…

お知らせ:別のブログに参加していることについて

別のブログに参加しています。 最近このブログの更新頻度が低くなっているのですが、書くこと自体をやめたというわけではなく、大学時代の友人たちと、別のブログをやっていて、そっちで書いているのです。 そっちでは名前を変えてやっており、また、開示し…

高校演劇という不幸/高校時代の同窓会に参加してきた

昨日、高校の友人たちとの小規模な同窓会に参加して来た。かつて皆で作った演劇を放映し、会は盛り上がりを見せた。 会を通して、当時はどうしようもないと思い、それを作ったという経験を思い起こすたびに自己嫌悪に陥っていた劇が、案外面白かったという嬉…

ポストモダンの国語教育論について考えたこと 田中実の〈第三項〉理論と公共性 

この春から学校教育に関わる現場で働き始めた。毎日がめまぐるしく過ぎていく中で、なかなか考える時間がとれない。 働き始める前に考えていたこと、そして、働き始めて以降に考えるようになったことを一旦冷静に整理したい−−−そのような思いから、数日前よ…

人生を見渡す眼の獲得:「秒速5センチメートル」 あるいはみんなが観る映画を観るということに関して

大学二年生の時、友人の住む県人寮で、「秒速5センチメートル」というアニメ映画を観た。僕はそれまでこのアニメ映画の存在すら知らなかった。観てからインターネットで調べ、それが非常に有名な映画であることを知ったのである。それを知った時にまず持っ…

16歳の雌猫

このブログで、死んでしまった猫ではない方の猫を「14歳の雌猫」と何度か書いたのだが、それは村上春樹に影響されてなんとなく自分の頭を占めるようになった概念(たしか村上春樹が「14歳の雌猫」について語っていたのを、どこかで読んだ覚えがある)で…

うちらめっちゃ面白くない?

自分のやってきたことが、本当に意味があったのか。その問いは、鋭く、大部分切ない。「意味はなかったのではないか」−−−そのような答えを含意するからだ。 その問いを発するものは、「意味がない」という答えを想定している。その怖さと戦い、時にはとても…

「懐かしい」とは何か? 大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』

毎日なかなか疲れる。そもそもこれまでずっと座りっぱなしの生活を送って来たのだが、今は毎日、二時間は立っている。もちろん電車で。それなりに空いている電車に長時間乗るのが私の通勤スタイルで、生活のあり方としては、どちらかといえば健康的になった…

『騎士団長殺し』についてイマイチピンと来ないこと

今日朝twitterをみていたら、この間『騎士団長殺し』について考えるエントリを書いた時に参照した記事の評者の一人である鴻巣友季子さんが中島京子さんと対談している記事が回ってきた。 dokushojin.com この間のエントリも合わせて貼っておく。 summery.hat…

私が文学を学ぶことになった理由

先日友人に教えられ、東京大学の田中純教授が、自身の教える大学院のコースを終了する学生に向けて書いた言葉を読んだ。内容は、ブログで公開されている。 修士修了生への言葉 - Blog (Before- & Afterimages) これに関し、twitterで田中先生は、以下のよう…

ナルトを読んだ

何やらもやもやとした気分で読むことも書くこともうまく出来なくなっていた。多分原因は、ここ四日ほど、人とほとんど一言も会話していないことにある。読んで書くだけに、身体が飽きているのだ。つまり私は人と話したいのだと思う。もしくは、身体を動かし…

悲しみを「資産」としてとらえ、共に生きること 大江健三郎「資産としての悲しみ−−−再び状況へ(五)」

物語に倦んで、ふと手にとった『世界』(1984年7月号)に大江健三郎さんのエッセイを見つけた。「資産としての悲しみ−−−再び状況へ(五)」と題されたこのエッセイは、『生き方の定義−−−再び状況へ』という単行本に収録されることになった。 ci.nii.ac.jp 単…

ラインは本当に疲れる/トーマス・マン『魔の山』

ラインは本当に疲れる。私がコミュニケーションに期待をしすぎているのかもしれない。返信が来るとテンションが上がり、「すぐに見たい」と思うし、来ないなら来ないで「いつ来るのかな、これだけ遅いということは、何か変なことを書いてしまい、相手が怒っ…

俺は、このまま本に埋もれ続けるのか?

このブログをある程度義務的な形で、更新し始めたのは最近になってからだ。就職するのなら、大学の授業で供給されてきたような書く機会はなくなるだろう。それは僕にとっては寂しいことだった。書けない書けないと思いながら書こうと試みることの中で気づく…

大学を離れるなんて、嘘だろう?という気分

今日は、祖父母に私の大学院の修了と就職を祝ってもらいました。その中で、「長く大学にいたけど、ついに卒業だねえ」という言葉をかけられ、確かに、私は長く大学にいた、としみじみ思ったものでした。 ▽ それにしても、六年も大学にいたとは本当に信じられ…