目をつぶらない

文学を専門とする大学院生の日記です

フィリップ・K・ディック『高い城の男』:偽の歴史と二項対立

大学一年生の時、シラバスでふと見つけた船曳ゼミに未だに参加しています。文化人類学者の船曳建夫先生のゼミです 最近、そのゼミの読書会で、フィリップ・K・ディックの『高い城の男』という作品を読んだので、感想を書いておきます。 高い城の男 (ハヤカワ…

繊細さを失わず、生活を見つめる:津島佑子「水辺」

昨夜は眠れなかった。築30年を超える私のアパートの窓は、時折激しくガタガタと鳴って、その度にまどろみから覚まされた。そして、このような嵐の夜に、その風雨の影響を受けず曲がりなりにも睡眠をとることができるとはなんということだろう。住むべき家が…

「やりがい搾取」の弊害

今日は顧問をしている部活動の練習試合があったので、1日学校にいた。 いくら仕事場である学校にいるとはいえ、部活動のための休日出勤である。だから、本来は自分の好きなことをしていていいのだ。実際に同じように休日出勤をしている同僚たちは思い思いの…

僕が最高のツイッターだった頃

先日僕が最高のツイッターだった頃の記事を書きました。 queerweather.hatenablog.com ▽ ちょっと最近とてつもなく疲れています。会社の椅子が合わないのか、腰が痛い。

飲酒事故で亡くなった東大生の高原くんに関する記事を書いた

前回の記事で、僕は次に2012年に飲酒事故でなくなった東大生の高原くんに関して書くと述べた。 summery.hatenablog.com その記事を、僕は今参加している別のブログに書いた。 queerweather.hatenablog.com 昨日サイゼリヤで一人ワインを飲み、若干酔い始めて…

「不幸でもいい。ただ、生きていって欲しい。」船曳建夫先生の言葉をフィクション化してブログを書いた

大学の学部生だったころ、僕がよく(しつこく)顔を出していたゼミの先生が退官することになった。僕が東京大学に通っていたことはこのブログではもはや明らかなので、先生の名前も出してしまうが、その先生とは船曳建夫先生である。 船曳先生は退官記念講演…

物語の力/創作の力とは何か

最近、twitterで自分と同じように、中高の教員をしている人をフォローするようになった。そうしてフォローした中の一人がつぶやいた以下のようなつぶやきが、昨日私のタイムラインに投稿された。二つの企業に内定した卒業生に対して、教員をしているツイッタ…

お知らせ:別のブログに参加していることについて

別のブログに参加しています。 最近このブログの更新頻度が低くなっているのですが、書くこと自体をやめたというわけではなく、大学時代の友人たちと、別のブログをやっていて、そっちで書いているのです。 そっちでは名前を変えてやっており、また、開示し…

高校演劇という不幸/高校時代の同窓会に参加してきた

昨日、高校の友人たちとの小規模な同窓会に参加して来た。かつて皆で作った演劇を放映し、会は盛り上がりを見せた。 会を通して、当時はどうしようもないと思い、それを作ったという経験を思い起こすたびに自己嫌悪に陥っていた劇が、案外面白かったという嬉…

ポストモダンの国語教育論について考えたこと 田中実の〈第三項〉理論と公共性 

この春から学校教育に関わる現場で働き始めた。毎日がめまぐるしく過ぎていく中で、なかなか考える時間がとれない。 働き始める前に考えていたこと、そして、働き始めて以降に考えるようになったことを一旦冷静に整理したい−−−そのような思いから、数日前よ…

16歳の雌猫

このブログで、死んでしまった猫ではない方の猫を「14歳の雌猫」と何度か書いたのだが、それは村上春樹に影響されてなんとなく自分の頭を占めるようになった概念(たしか村上春樹が「14歳の雌猫」について語っていたのを、どこかで読んだ覚えがある)で…

うちらめっちゃ面白くない?

自分のやってきたことが、本当に意味があったのか。その問いは、鋭く、大部分切ない。「意味はなかったのではないか」−−−そのような答えを含意するからだ。 その問いを発するものは、「意味がない」という答えを想定している。その怖さと戦い、時にはとても…

「懐かしい」とは何か? 大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』

毎日なかなか疲れる。そもそもこれまでずっと座りっぱなしの生活を送って来たのだが、今は毎日、二時間は立っている。もちろん電車で。それなりに空いている電車に長時間乗るのが私の通勤スタイルで、生活のあり方としては、どちらかといえば健康的になった…

『騎士団長殺し』についてイマイチピンと来ないこと

今日朝twitterをみていたら、この間『騎士団長殺し』について考えるエントリを書いた時に参照した記事の評者の一人である鴻巣友季子さんが中島京子さんと対談している記事が回ってきた。 dokushojin.com この間のエントリも合わせて貼っておく。 summery.hat…

私が文学を学ぶことになった理由

先日友人に教えられ、東京大学の田中純教授が、自身の教える大学院のコースを終了する学生に向けて書いた言葉を読んだ。内容は、ブログで公開されている。 修士修了生への言葉 - Blog (Before- & Afterimages) これに関し、twitterで田中先生は、以下のよう…

ナルトを読んだ

何やらもやもやとした気分で読むことも書くこともうまく出来なくなっていた。多分原因は、ここ四日ほど、人とほとんど一言も会話していないことにある。読んで書くだけに、身体が飽きているのだ。つまり私は人と話したいのだと思う。もしくは、身体を動かし…

悲しみを「資産」としてとらえ、共に生きること 大江健三郎「資産としての悲しみ−−−再び状況へ(五)」

物語に倦んで、ふと手にとった『世界』(1984年7月号)に大江健三郎さんのエッセイを見つけた。「資産としての悲しみ−−−再び状況へ(五)」と題されたこのエッセイは、『生き方の定義−−−再び状況へ』という単行本に収録されることになった。 ci.nii.ac.jp 単…

ラインは本当に疲れる/トーマス・マン『魔の山』

ラインは本当に疲れる。私がコミュニケーションに期待をしすぎているのかもしれない。返信が来るとテンションが上がり、「すぐに見たい」と思うし、来ないなら来ないで「いつ来るのかな、これだけ遅いということは、何か変なことを書いてしまい、相手が怒っ…

俺は、このまま本に埋もれ続けるのか?

このブログをある程度義務的な形で、更新し始めたのは最近になってからだ。就職するのなら、大学の授業で供給されてきたような書く機会はなくなるだろう。それは僕にとっては寂しいことだった。書けない書けないと思いながら書こうと試みることの中で気づく…

大学を離れるなんて、嘘だろう?という気分

今日は、祖父母に私の大学院の修了と就職を祝ってもらいました。その中で、「長く大学にいたけど、ついに卒業だねえ」という言葉をかけられ、確かに、私は長く大学にいた、としみじみ思ったものでした。 ▽ それにしても、六年も大学にいたとは本当に信じられ…

学びとは何かについて改めて考えてみる

日々努力を継続し、自己研鑽に努めている人の中に、驚くほど狭量な価値観しか有していない人がいる。なぜだろう。なぜこうなってしまうのだろう。多くのことを学んだ結果がこれなら、学ぶことにいかほどの意味があるのだろう、と絶望的な思いにかられる経験…

大学院の修了、そして、「生まれてくる生命を支える社会を創る」方へ

大学院を修了しました 修了しました。とにかく多くの人に会い、多くの話をしたここ二日間。くたくたでした。二週間ほどあまり人と話をしていなかったのもあり、相手の話を聞いて、それに受け答えることを思い出すことから始まり、表情を読んで微妙に言葉のニ…

購入すると読む気がなくなるの、本当に罪深いと思う

誰にでもあるだろう、衝動買いの経験。今日私も久々にやってしまった。 ことの発端は、新宿のブックファーストで見かけたソローキンの『青い脂』という本。 青い脂 (河出文庫) 作者: ウラジーミルソローキン,Vladimir Sorokin,望月哲男,松下隆志 出版社/メー…

久々にどっぷりと読書に浸る。 谷崎潤一郎『細雪』

久々にどっぷりと読書に浸っている。「小説の先が気になって、夢中で読みふける」という体験の只中にある。 修論執筆中は、「夢中で読みふける」ことはしなかった 思えば、修士論文執筆中にはこのようなことを経験しなかった。修論で対象にしたのが牽引力を…

物語の創作を授業で行うことについて考えたこと

昨日、以下のようなエントリが回ってきて、興味深く拝読した。私も、高校の国語の授業で小説の創作を経験したのだった。 askoma.info 当時のことを振り返ると、私は創作が好きだったので、「書いた」「書く」という意識だった。しかし一方、周囲を見回すと、…

雑記:岩盤浴に行ってきた

岩盤浴に行ってきた。3日前のことである。 家から自転車で20分くらいのところに岩盤浴場ができたのは、三年前の話だ。それから一年ほどは、私の家の近所で岩盤浴ブームが巻き起こっていたように思う。母からも「隣の家のおばさんは年間パスを購入したらしい…

5文型に変わる提案が新鮮 安藤貞雄『英語の文型:文型がわかれば英語がわかる』(開拓社、2008年)

何を学ぶに際しても、学び始めは特に楽しいものではないだろうか。昨日に続け、今日もまた、英文法に関する本を読んだ。今日読んだのは安藤貞雄『英語の文型:文型がわかれば英語がわかる』(開拓社、2008年)である。 英語の文型―文型がわかれば、英語がわ…

疑問がするすると解消していく 中川右也『教室英文法の謎を探る』(開拓社、2010年)

うわ、読めない… 久々に英語を読もうとしたら、全く読めなくなっていた。「あーあ」と思った。 こういうときいつもなら、英語の本とその翻訳とを並べ、何日か取り組むことで英語力を取り戻していくのだが、今回もそうしようとして、どうもそのやり方に倦んで…

『騎士団長殺し』を読み終わった

『騎士団長殺し』を読み終わった。異様な小説だな、と思った。過去二つの記事で述べた、漠然とした底の浅い印象。それが、筆者の意図的なものかもしれない、とラストを読んで思う。何かが解決した気がしない。あえて解決させない、という意思が読み取れる。 …

東日本大震災後と人間性 川野里子さんへのインタビュー記事における石牟礼道子『苦海浄土』

歌人の川野里子さんが、中国新聞のインタビュー「詩のゆくえ」で、石牟礼道子『苦海浄土』に関して一言よせている。その一言に強く惹きつけられた。 言わずもがなかもしれないが、『苦海浄土』とは水俣病の発生から終息までを著者石牟礼が追った一種のルポル…