SUMMERY

目をつぶらない

滑らかに生きたい。明晰に生きたい。方途を探っています。

2019-01-01から1年間の記事一覧

作家・古谷田奈月さんについて 三島賞受賞作・「無限の玄」(2017年)まで

最近話題作を繰り出している作家として私は古谷田奈月さんに注目している。二度くらいにわけて、ちまちま調べた情報や、読んだ古谷田小説の感想について書きたい。 なお、他に村田沙耶香さんや高山羽根子さん、高橋弘希さんについても関心があり、それについ…

Young HongKongers, please be prepared for a long time fight

This is an English (summary) version of the article below. summery.hatenablog.com How can you get to a point of compromise? The 2014 umbrella movement for universal suffrage became a major topic of conversation in Japan, but less attention…

村田沙耶香、高山羽根子、雑記

さて、雑記なのですが、最近読んだ小説についてまずは一言ずつ感想を述べたい。 村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』(朝日新聞出版、2012年) publications.asahi.com 最近珍しいニュータウンを舞台にした小説。ニュータウンの開発やその停滞と第…

香港の若者たちへ:問題に長く関わり続ける覚悟を!

香港のヴィクトリア・ピークからの眺め 一時期、香港に関心を持ち、色々に調べたことがある。国内の香港に関する文献で社会学系のものは、基本的にすべてチェックし、その上で南華早報(South China Morning Post)という香港で書かれる英字新聞を毎朝読んで…

いずれ好きなことでしか生きられなくなる?:雑記

今日職場が手配してくれた外部研修に行ってきた。色々な事情からその内容には立ち入らないが、他の業種の人たちと話す中で、改めて「一生懸命やったことは無駄にはならない」という言説について考えた。 小学校の頃の先生は、こうした言葉そのままではないが…

既に持っているものの中にある、乗り越えることの契機:『千と千尋の神隠し』

昨日書いた以下の記事の続き。『千と千尋』の作品評でなく、それを観た自分の経験について書いています。 summery.hatenablog.com 上の記事にあるように、10歳の頃の私は、スクリーンの前で、連なるイメージや展開など、ほぼ全てのことに驚愕したのだった。…

『千と千尋の神隠し』を観た10歳の頃のこと

先日テレビで『千と千尋の神隠し』が割と遅い時間帯にやっていて、後半の一部を観た。観ていると、この映画を初めて観た時のことを幾重にも思い出した。私にとって同作は、距離をとって冷静に・客観的に語ることが難しい作品である。それを鑑賞することは、…

『闇ミル闇子ちゃん』・アイデンティティ・大学院

『闇ミル闇子ちゃん』(2014)の単行本を明け方ふと読み直した。本棚にひっそりとしまわれているのに気づいてしまったから。 勉強では順位が決まるから一番になれないけど、自分のでっち上げた芸術の«城»に閉じこもってればいつだってオンリーワンだものね! …

私にとっての「広島への最初の旅」

毎年この時期になると、高校時代の社会科ゼミナールで、8月6日〜9日まで広島に研修旅行に行ったことが思い出される。高校2年生の時だった。旅程は平和運動を行う高校生団体との交流や、町歩きフィールドワーク、公益財団法人放射線影響研究所・広島市立大学…

さても哀しき教育の欲望

長い期間本気で求め、行動を積み重ねていると大体のものは手に入るような気がする。そもそも、長く本気で求め続けられるものというのは、手に入りうるものだから。最初は全く手に届かないところにあるかもしれないが、行動を起こすと少し近くなる、その時点…

Silent Hill4 と最近読んだ現代小説

www.youtube.com 今週も忙しかったなあ。 折に触れて観直す動画が上に貼ったもの。Silent Hill4:The Roomというゲームのオープニング動画であるのだが、現れる異形のものたちの表象が見事だと思う。ゲーム内で「ゴースト」と呼ばれる彼らのいずれも、大きな…

雑記:学校現場におけるマネジメントスキルの育成はどうすればいいのか

さてさて、雑記に行くが、なんでしょうね、最近疲れることが増えて来てしまって、授業準備と授業の繰り返しだけやっていれば楽なものを現実にはそうはいかないのが辛いところね。担任業務、はまだ生徒相手だから楽だが、保護者対応に行事・部活関係は本当に…

高橋弘希『送り火』の語り手に対する違和感

毎日疲れる。心地よい疲れと、身体が重くなるような倦怠と、その狭間にある。これ以上忙しくなると疲弊していきそうな、そんなギリギリなところにいる気がする。この生活の破綻もそう遠くないかもしれない。 高橋弘希の『送り火』を読んだ。第159回芥川賞受…

Prime会員をやめます/自己愛の強い人

標題の通りamazonのプライム会員をやめることになった。長らく学生でい続けているので、ずっと学生料金だったが、ついにStudentの会員年限に達してしまったので、これを機会にやめることにした。正規会員料金が確か毎月500円で、まあ、それほどの価値はない…

先輩教員の転職と教員に求められる「専門性」について

良いことなのか悪いことなのかわからないが、筆が進むのは大抵自分の中に違和感が渦巻いている時である。もちろん、自分の力で変えることができたり、にぎりつぶすことができる程度の違和感であれば、わざわざ筆をとることもない。自分の力で容易に変えるこ…

話を聞いているふりがうまい人/責任を逃れるのがうまい人

話を聞いているふりがうまい人がいる。こちらの目を見てうなずいてくれる。しかし相槌とともにはさむ「共感の言葉」がずれている。こちらが喜び半分、不安半分で話している時も、「本当によかったね。幸せだね」や、「すごい!優秀ですね」といってまとめる…

なぜ「信仰」なのか 柳田国男・丸山眞男・大江健三郎に学びつつ

柳田と丸山の新書を読んだ ここ数日柳田国男と丸山眞男に関する新書を読んでいた。具体的に読んだのは以下の二冊。 柳田国男 ──知と社会構想の全貌 (ちくま新書) 作者: 川田稔 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2016/11/25 メディア: Kindle版 この商品を…

「飼っていた猫が死んだ」の記事をリライトした。

標題のとおり、「飼っていた猫が死んだ」の記事をリライトした。現在の自分から見ると違和感のある表現が散見されたため。よろしければご笑覧ください。 summery.hatenablog.com 合わせてこちらも。こっちは、特に現在から見ても違和感がない。 summery.hate…

私を教育した人の複数

小学校の頃から現在に至るまで、都度都度私は教育されてきたのだが、同じ人に長い期間教育されたことは数えるほどしかなかった。例えば小学生時代。私の小学校では2年に一度クラス替えがあり、担任の先生が交代するタイミングは基本的にクラス替えに合わせて…

橋本治の死去に驚く:「ずっと若い人」の死

橋本治が死んだ タイトルどおり、作家・橋本治さんのご逝去に驚いた。 作家の橋本治さん死去 70歳 | 2019/1/29(火) 18:13 - Yahoo!ニュース 橋本治については以前別のブログに書いた。そこから少し長めに引用しておきたい。 引用元記事 queerweather.hatenab…

「どうでもいい」仕事との付き合い方がわからない

書き出しによって文のスタイルが結構変わるので、雑感の文体なら読む、という読者少数いてくれると、それは嬉しいことだなあと思ったりする。一応この系列につらなる記事の複数を末尾に貼り付けておく。 △ 今週は決断について考えることが多かった。本当に仕…

駒場の西側

昨日午後は久々に午後の街をゆっくりと歩いた。駒場キャンパスを西につっきり日本近代文学館の側に抜けるとある、閑静な街並みが最近のお気に入りである。一つ一つの家が比較的大きな空間を持っており、かつその空間を余すところなく使い切ろうとはしていな…

一人暮らしでできるようになったこと

たまにすごくライトなことが描きたくなるので、今日は一人暮らしでできるようになったことを書く。 一人暮らしを始めたのは一昨年の7月で、これを書いている2019年1月で今ちょうど1年半になる。全く完全にいいことづくめというわけではないが、主観的には大…

四年ぶりの『風立ちぬ』考:叶わない夢を追うことのペーソス

久しぶりに『風立ちぬ』を観た 四年前、『風立ちぬ』を観て急ぎ以下の記事の感想を書いた。タイトルのとおり、『風立ちぬ』を批判した記事だ。 summery.hatenablog.com その後、大学院でさらに勉強を進めたり、映画『この世界の片隅に』を観て戦争とその表象…

スカイ・クロラの同人小説の断片

週休二日制の労働者をしていて不思議なのは水曜日と木曜日の境である。水曜日までは「まだ水曜日か」と思っていて木曜日になると途端に「もう木曜日なのか」と思うようになる。本当に、不思議。 以前戯れにスカイ・クロラの同人のようなものを書こうとしてす…

エヴァンゲリオンの中の愚かな人間たち

お正月にPrime Videoにエヴァ序・破が入り、何事にも基本的に集中できない飽食と惰眠の二、三日、なんとなく改めて観たのだった。実に五年ぶりくらいだった。というのもQは気になって何度か折に触れて観てはいるものの、序と破はQの前座のような気がして、ス…